それは小型の機械兵だった。立方体から足が八本ついているような形で、側面には小型の銃が、中央にはレーザー砲が備えられている。
一体はガディラの矢によって撃退された。だが、まだ九体いる。それは、まるで蜘蛛が蠢いているかのようだ。
「な、何なんだ、こいつらは!」
「とにかく構えろ!バリアー内にいるからって油断できねえぞ!」
ノルヴァを怒鳴りつけ、プレストは「蒼刻の光(ブライズ)」を呼び出して構えた。ラージアは杖にまたがって上昇し、キリアは杖を、ノルヴァは剣を構えた。
しかし、機械兵は出てきただけで攻撃しようとはしない。不思議に思っていると、奥から一人の人物が現れた。
「ここまで早く気づかれるとは、計算外だ」
水色の瞳を持ち、同色の髪を肩の少し上まで伸ばした少年だ。歳はプレストと同じくらいで、その瞳には殺気があり、真っ直ぐにプレストを見据えている。
「貴様が、プレスト・ライザーズか?」
「……それがどうした?」
プレストは警戒を強めた。あらゆる視点から見ても、明らかに相手はバーニス国の人間だ。だが、プレストは今まで、実際にバーニス国の人間を見たことがなかった。
機械兵がスレア国等に侵入する理由の一つとして、「機械主義」としての技術誇示がある。その理由でいけば、人間が出てくることなどないのだ。だから、ここで人間を送り出してきたのはバーニス国らしくない。
加えて、周りの機械兵は、少し前に襲ってきた大型の機械兵よりは強力そうだが、旧型である。あのレーザー砲はバリアーで簡単に防ぐことが出来るのだ。それでは、プレストたちを殺すことはできないだろう。
つまり、今回機械兵に関しては、「技術の誇示」ではないし、殺害目的でもない。それでも、目の前にいる少年は殺気を放っている。
プレストは呟くように言った。
「人間が、主戦力で戦うってことなのか……?」
すると、少年が右手を上げた。その瞬間、プレストたちに向かって機械兵が一斉にレーザー砲を発射する。それは、まっすぐにプレストたちへと襲い掛かる。
鼓膜が破けそうな轟音が辺りに響いた。地面は穴だらけとなり、土が飛び散る。
しかし、ただそれだけだった。
一旦砲撃が収まると、砂煙の向こうからプレストたちが現れる――やはり、バリアーで完全に防いだため、まったく無傷だ。
だが、それは――。
「承知でやりやがったな、こいつら」
「うん、そうみたい」
キリアが杖を掲げると、砲撃を防いだバリアーが解かれていった。
すると、機械兵たちは、さささっと森の中へ入っていった。そして少年も奥へと入っていく。その際、プレストに人差し指と中指を動かし、こちらに来いという合図を送った。
挑発だ。
「どうするんだ、プレスト?」
ノルヴァが不安そうに問いかけた。
森の中では、分散して戦うしかないだろう。そして、あの殺気からしておそらく、プレストは少年と戦うことになり、自動的に四人は機械兵と戦うことになる。少年の実力はわからないが、バーニス国が機械兵ではない彼を送り込んできたのだ。警戒する意味でも、実力はプレストと同等以上と考えた方がいい。
とにかく今回は、プレストの殺害が目的だと見てよさそうだ。実力だめしも考えられるが、人間同士の戦いの記録そのものは役に立たないだろうし、機械兵にやらせないのが疑問に残る。
プレストは森を見て言った。
「どうするも何も、追いかけるしかねえ。相手に乗っかっていくぞ」
だいたい、この場に留まっていれば、何事だと騒いでいる学校関係者が来てしまう。先ほどの砲撃は、そうするように仕向けるためだったのだ。機械兵が来ていることや、特殊部隊がいることなどは、今あまり知られない方が良いだろう。
プレストは指示を出す。
「森の中での戦闘になるけど、まずキリアはこの地面を元に戻しておくこと。あと、指示はガディラに任せる。敵の位置把握ができるみたいだしな。ノルヴァは近距離で戦う分危険だから、ちゃんと指示を聞けよ。ラージアは、機械兵との戦闘終了後に、金属の欠片とか拾っておくこと。んで、俺はたぶん、あいつと戦うことになるだろうから、あらかた片付いたら援護を頼む」
「了解!!」
「それじゃ、突入だ」
なんか、自然と隊長のようになってしまったな、と思いつつ、プレストは真っ先に森の中へと入っていった。
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