第二章『合成術士』 ( ニ )

プレストはため息をつくと、ラージアを睨み付けた。

「お前、入学式の時にはすでに色々と知ってたんだろ?」
「うん、おじい様から聞いてたよ」
「だったら、そん時に言えよ!別に長々説明しなくてもいいし」
「だって、おじい様が『すべて説明しておくから言わなくて良い』って言ったから……。でも、今考えてみれば、お兄ちゃん資格取らなくちゃいけないし、そこまでの時間はなかった、よね」

苦笑いのラージアに、プレストは再びため息をついた。
おそらく、これもまたトラストが仕組んだことに違いない。特殊部隊の他の隊員については、隊長としても、個人的な気持ちとしても、あらかじめ知っておいた方が良い。というのに、あの祖父はどこまで孫で遊ぶつもりか、とプレストは思った。
しかし、毎度このように思っていても疲れるだけなので、別のことを考えることにした。
明日の昼に出発するとなると、あまり時間はない。だから、今ここで隊員を揃えたのは、単に隊員のことを知るだけでなく、戦力構成なども考えていかなければならない、ということではないか。それに、先ほどのライザーズ邸での戦闘を考えると、機械兵がいつ襲ってくるのかわからないのだ。今、ある程度考えておいた方が良いだろう。
そこで、プレストは四人をざっと見た。
ラージアは、攻撃系魔術のエキスパートだ。しかも、光系と闇系の両方の魔術が使えるという、数少ない「魔術士」の一人でもある。
光系は光・火・風属性、闇系は闇・水・地属性を示す。自分の魔術属性がどちらになるのかは生まれつきで、攻撃・防御共に同属性であるのが普通である。しかし、ラージアの場合は、防御属性は光系でも、攻撃属性は両方なのである。よってその分、魔術の選択範囲が広がり、より有効な魔術を使うことができるのである。
空中戦でも活躍が期待できる、まさに「優秀な妹」といっても過言ではない。
次に、ガディラについてはまったく知らないものの、平民からの選出であることや、感じ取れる「気」の様子からして、力量は相当なものだろう。
プレストは口を開く。

「ガディラは、『弓術士』だったな。にしても……そんなに筋トレとかきつかったのか?」
「ああ、体格のことか。俺は、最近の三年間で弓術をやって、それまでは格闘術をやっていたからな。そこでだいぶ鍛えられたよ」
「なるほど……それじゃ、近距離攻撃も可能だな」
「あと、『気』の方も格闘術でずいぶん鍛えられたんで、敵の感知とかも一定の範囲なら可能だな。機械兵でも、何か違和感があるとわかるぜ」

そんなガディラを見て、プレストは想像以上の実力を感じた。
単に技量だけでなく、冷静さも感じられる。プレストが隊長だと命じられなければ、おそらく彼が隊長を務めていたに違いない。そう考えると、彼は副隊長として最適ではないか、とプレストは思った。

「『気』ってそんなこともできるんだ、すごいなあ……」

ノルヴァの呟きが聞こえたので、プレストはそちらに目を向けた。

「お前、『気』の使い方は大丈夫だよな?資格も取っているし」
「え、ま、まあ、基本的なことなら……」
「だから、何で動揺する?」

呆れたプレストの一言に、ノルヴァはまるで何かを恐れているような態度を見せた。
そして、少しずつ言葉を発していった。

「じ、実は……試験ギリギリでさ。『気』を出すのに時間がかかったり、その……」

その返答に、プレストは眉間に皺を寄せた。
武術専門学校時代よりは自信がついているのかと思えば、そうでもないようである。むしろ、試験でますます自信を失っているようにも感じる。
プレストは言った。

「あの厳しい卒業試験に落ちてないんだろ?だったら、ギリギリだろうが関係ねえ、それでいいんだよ。つーか、そういう態度は試験に落ちた奴に失礼だろ」
「だけど――」
「なあ、ガディラ。こいつに『気』の基礎でも応用でも教えてやってくれねえか?いつでもいいし、とにかく自信がつくようにな。ノルヴァ、お前このままだと戦闘がきつい……つーか、場合によったら死ぬぞ」

真剣な言葉に、ノルヴァは思わず硬直した。
機械兵を攻略するには、剣だけの攻撃では難しい。必ず「気」が必要になってくる。だからもし、自信のなさで「気」をうまく使えないようなことがあれば、致命的だ。何よりもノルヴァ自身のために、自信をつけてもらわないといけない。
と、ここでキリアが呟いた。

「その前に、私が助けられないかな?魔術で……」
「……いや、そういう問題じゃねえから。そりゃまあ、援護してくれればいいけどな」

プレストは思わずずっこけそうになった。
確かに、互いが補い支えあうのは重要なことだ。個人ではできないことでも、チームワークによってできることもある。
しかし、そこが焦点ではない。それを察してほしい、とプレストは密かに思った。
ちなみにキリアは、補助系魔術に関する実力なら問題ない。ただ、攻撃系魔術さえしなければ――いくら天然だといっても、攻撃系を放つことはないだろう。

(まあ、俺とノルヴァが前衛で、ラージアとキリアが後衛。ガディラが中衛で、後衛を守って前衛をサポートってのが、普通だよな……もし、戦力を二分するなら――)

プレストは色々と構成を考えていく。ただ、実際は臨機応変に動かなければならないため、基本的な部分さえ考えればそれで十分だろう。
それにしても、別々の資格を持ち、ある程度顔見知りで揃えたのは、一応トラストの配慮というところか。
色々と考えていたプレストだが、事態は唐突に起きた。

「危ない!」

ガディラの言葉を聞いた時には、プレストも戦闘態勢に入っていた。
殺気だ。
殺気が、森の方から向けられている。しかし、その正確な位置まではわからない。
と、キリアが五人を囲うようにバリアーを張った。プレストとガディラの反応を見て、すぐに発動したようだ。
すると、迅速な対応のおかげか、相手は殺気だけを放って攻撃してこない。しかし、そこで終わるわけでもないだろう。
ガディラはあえてバリアーの範囲を抜けて、弓矢を構えた。敵の位置が、ガディラにはわかるようだ。

「十体と一人、か。そこにいるのはわかってるぜ」

そして、矢を放った。途端、破壊音とともに機械兵が一斉に現れた。


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