第一章『入学日』 ( ニ )

二人はしばらくして、彼らの家に到着した。
その外観は、これが家なのかと疑う人もいるだろう、まさに豪邸だった。ライザーズ家は王族が認める貴族なのだから当然といえば当然である。

「それじゃ、お前はここで待っとけ。また学校に行くだろうし」
「わかった。それじゃあ、気をつけてね」

気をつけて、とはどういうことなのだろうか。
すると、その言葉を合図に、プレストは家の中へと飛び込んでいった。中は言うまでもなく豪華だが、毎度見ているそれらを無視して、玄関から螺旋階段、そして廊下を次から次へと走り抜ける。そして、ある部屋の前まで行くと急停止し、息を整えないまま扉を開けた。

「どういうことだ、おい!」

プレストの怒鳴り声が部屋中に響き渡る。
しかし、部屋の奥にいる祖父、トラスト・ライザーズは微動だにせず、ただ目を閉じて座っているだけだった。そんな祖父に近づこうとして――プレストは足を止めた。
その時だった。
突如、どこからか雷を帯びた矢が放たれた。プレストは横に飛んですぐに避けたが、今度は頭上から雷の槍が降ってくる。しかし、それもまた難なく避け続けていく。雷の槍は、床に当たると弾けるようにして消えていった。
激しい攻撃に対して余裕で避け続けるプレストだったが、しばらく経ってから突然、動きを止めた。そして、雷の槍が右腕に当たり、わざとらしく派手に倒れる。先程までの人物とは思えない光景だ。
そんなプレストの目の前で杖をつき、トラストは怒鳴った。

「この馬鹿たれ!礼儀をわきまえんか、礼儀を!扉はノックして静かに入る、敬語を使う!いいな!」

これが、プレストが祖父を嫌う理由であり、ラージアの警告の意である。
少しでも礼儀が悪ければ魔術を放つ。しかも、十二歳になってから突然だった。礼儀が悪いことに関してはともかく、魔術を放つのはどうか、とプレストはいつも思う。しかも、あのようにわざと倒れなければ、永遠と続いてしまうのである。
しかし、二度も最高司令官を務める祖父に文句を言う者はいない。むしろ、尊敬されているため、このようなことも彼なりの教育的指導であると見られている。
トラストは窓の方へと歩き出す。プレストはゆっくり立ち上がって、イライラしながらも今優先すべき質問を投げかけることにした。先ほどの右腕の傷はかすり傷程度で、回復魔術で一瞬で治った。

「えっと……今回は、どのような用件で?」
「うむ、まずはこれを見ろ」

トラストは机の上に置いてあった資料をプレストに手渡した。プレストはそれを見、首を傾げる。

「『ただいま、無料マッサージ実施中!詳しくは当店にて――』って、何ですかこれは」

その途端だった。
突然、後頭部への突風がプレストを襲った。不意打ちだったため、プレストの顔は思い切り床に叩きつけられる。相当痛かったのか、言葉も出ない。
先程のチラシが手から離れて舞い、それをトラストが受け取った。

「いやあ、すまんすまん。間違えて持ってきてしまったわい。すぐ取りに行ってくるから、ここで待っていろ」

そう言いながら、トラストは壁に描かれた魔法陣に手を置く。すると、一瞬にして彼の姿が消えた。
この魔法陣は資料室と繋がっており、そこまで瞬間移動したのである。ちなみに、トラストの魔力しか使えないので、他の者に利用されることはない。
プレストは顔に手を当てながら、近くにあったソファーを支えにして立ち上がった。よほどダメージが大きかったらしく、鼻血も出ている。しかし、それも回復魔術でいとも簡単に完治した。

「くっそー……今のワザとだろ、絶対……。てか、貴族のくせに無料マッサージの広告とかいらねえだろ!」

ツッコミを入れつつ、プレストはソファーに座ろうとして――壁に目をやる。
それは、数枚の写真だ。そのほとんどはプレストとラージアの幼い頃で、両親や祖父とともに写っている。
そのプレストには、無邪気な笑顔があった。
それをしばらく眺めていたプレストだが、やがて苛立ちながら口を開く。

「また付きまとうのか、てめえらは」

その背後に、突如巨大なものが現れた。それは、金属の塊――機械兵だった。


次に進む     前に戻る

小説に戻る                 オリジナルに戻る                 トップページに戻る