プロローグ

目の前に広がる光景を、男は信じることができなかった。

「どうなってんだ……冗談だろ……?」

彼は呆然と呟いた。この静かな状況においては、その小さな声もはっきりとしていた。
そして堪えきれずに、男は悲しみと怒りの声を上げた。

「誰だ……俺の故郷をめちゃくちゃにした奴は……!!」

目の前には、崩壊した街があった。
建物はすべて破壊され、あちこちに人の死体が転がっている。そのほとんどは、生前とは似ても似つかない姿だった。それでも、何人かは男の知人だとわかった。
男は膝をつき、涙を流した。この光景は、帰郷を楽しみにしていた彼にとって、あまりに残酷なものだった。
しばらく経ってから、ふと男は顔を上げた。

「誰か、生存者は……?」

そう、まだ全員死んだとは限らない。一人、二人は生きているのかもしれない。
絶望の真っ只中にいる男は、少しでも希望を見出そうとしていた。そう思わなければ、今すぐにでも倒れてしまいそうだったからだ。
あらゆる死体に近づいては確認し、それを続けた。それは男に衝撃を与えるものばかりで、思わず目を瞑ってしまうほどだった。それでも、僅かな希望を捨てるわけにはいかなかった。
しかし、探しても探しても生存者は見つからない。
やはり、もう――諦めかけた、その時。

「……ん?」

背中に傷を負った若い男性に触れた手を見て、男は一瞬動きを止めた。そして、確かめるように全神経を注ぐ。
ほんの僅かだが、確かに息も心臓の鼓動も感じられる。つまり――。

(……生きている!)

その言葉が浮かんだ瞬間、男は瞳に光を灯した。そして、すぐに次の行動へと移っていった。
まず、青年に対して止血等を施すと、男は立ち上がって駆け出した。やがて馬に乗って戻ってくると、慎重に青年を馬の上に乗せた。一刻も早く治療を施す必要があるからだ。
とはいえ、急いで馬を走らせ、その振動で状態を悪化させてはいけない。男はゆっくりと馬を歩かせる。

「坊主!なんとか持ちこたえてくれよ……!」

すぐ近くには王都がある。もしかしたら間に合うかもしれない。
希望を失わないためにも、男は確実に前へ前へと進んでいった。

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