プロローグ『願い』

暗闇の中、ざわめく声や音が響き渡っていく。
それを確かめようと、壁にそっと触れた。

「気づかれたようね……大丈夫かしら……」

金の長髪に、紫の瞳を持つ美しい女性がいた。人間にはない、長く尖った耳と額の印が特徴的である。
そして彼女は今、黒い石に包まれていた。どうやら、閉じ込められているらしい。

「でも、私ではダメなの。それに、安否も確認したいから……。ごめんなさい、フリル。どうか無事で……そして――」

その時、足音が聞こえてハッとする。
その足音の主は、黒髪をうなじで結び、金目をぎらつかせた二十歳近くの男だ。彼もまた耳が尖っており、黒い煙のようなものが全身にまとわりついている。
彼は女性の方へと顔を向けた。暗くて表情は読み取れないが、嘲笑を浮かべているようだった。

「まったく無駄なことを……妖精一匹逃がしたところで、どうにもならないというのに……」

女性はそれを聞いて、ほんの少しだけ安心する。肝心の目的には気づいていないようだ。
男が立ち去った後、女性は瞳を閉じた。

「お願い、どうかこの世界を助けて……レン」

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